ヨーロッパ各国サッカーリーグ開幕:データ革命の時代
さて、いよいよ開幕したヨーロッパ各国のサッカーリーグ。ハメス・ロドリゲスがレアルに移籍し、香川真司はドルトムントに復帰、そして本田圭佑は開幕戦で勝利を引き寄せる先制ゴールと、今年のリーグも一層華々しくなりそうだ。
photo credit: calciostreaming via photopin cc
そして注目はなんといっても、今後のサッカーにデータ戦略がどう活かされてくるかだろう。昨シーズンの英国プレミア・リーグを盛り上げたのは間違いなくリヴァプールであり、その彼らの強みがデータサッカーだった(参考:英国プレミア・リーグと、リバプールのData-driven football)。
そして、まだ記憶に新しいドイツのW杯優勝(そして地元王国ブラジルに対する圧勝)の背景にあったのもまた、緻密なデータ戦略だった(参考:ワールドカップの閉幕、そしてデータドリブン・サッカーの開幕)。
以前に「フットボールの経営学:欧州サッカー・マネーリーグ2014」でも書いたように、マネーに関してビッグクラブとその他大勢の格差は大きく、下位のチームにとっては縮められそうにもない。だからこそ、米国メジャーリーグのアスレチックスのような、金をかけずに頭を使う方法がサッカーの世界でも、クラブチームとナショナルチームの双方のレベルにおいて、もっと求められていくのではないだろうか。
1990年代末、オークランド・アスレチックスは資金不足から戦力が低下し、成績も沈滞していた。新任ゼネラルマネジャーのビリー・ビーンは、かつて将来を嘱望されながら夢破れてグラウンドを去った元選手だ。彼は統計データを駆使した野球界の常識を覆す手法で球団を改革。チームを強豪へと変える。
今年の欧州サッカーは、果たしてどのチームがデータ活用が上手いか、そういう視点からも観戦したいと思う。「サッカー・データ革命の時代に読んでおくべきこの5冊」でも紹介したように、われわれ観客(そして多くの場合はチーム監督やスタッフも)がいかに「誤った感覚」に支配されているか、それはデータをきちんと分析してみなくては分からない。この分野の最新書である『サッカー データ革命 ロングボールは時代遅れか』は、われわれの先入観を見事に打ち壊してくれる好著だ。こうした分析的観点からチーム編成や攻守戦略を議論することが、これからのサッカーファンの新しい楽しみ方になっていくように思う。
現在、データでサッカーを読み解く時代は黎明期を迎えている。パスの成功率から移籍金の平均額にいたるまで、多くの数字を目にするようになったが、ほとんどのファンはこれらのデータが真に意味するものを理解できていない。本書はこれまでの通説を吹き飛ばし、理解したつもりになっている、サッカーというスポーツのとらえ方を変える。本書を読めば、分析的かつ科学的な視点でサッカーを見るようになるだろう。この道の第一人者として知られる著者、クリス・アンダーソンが、統計学の専門家であるデビット・サリーという強力なパートナーと組み、数字が解き明かすフットボールの真実のすべてを語る。
Amazon Campaign
関連記事
-
『ヤバい予測学』とフェイスブックデータが示す感情の起伏
フェイスブックのデータ・サイエンティストたちは毎度興味深いデータを見せてくれる。それは「フェイスブッ
-
ラグビー日本代表が強くなった理由|エディー・ジョーンズのコーチング
冬のスポーツ風物詩と言えば、箱根駅伝に加えて高校サッカー、そして大学ラグビーである。そんなラグビーの
-
ラグビー新リーグ開幕|注目は経営のプロが率いる「静岡ブルーレヴズ」
日本ラグビーのリーグ戦が新たに「リーグワン」として生まれ変わり、2022年1月8日に開幕戦を迎えた(
-
ワールドカップで大番狂わせを狙え|サッカー監督の世界級チームマネジメントの極意
2022年という年は、やはりサッカー・ワールドカップでの日本代表の活躍が強烈な印象として残っている人
-
野村克也の頭脳とデータ|戦後初の三冠王そして名監督としての実績と名声
日本のプロ野球界に燦然と輝く実績と名声。戦後初の三冠王の栄誉を手にした名キャッチャーにして、監督とし
-
リンクトインのデータに見る、アメリカの新卒採用と転職行動
雑誌WIREDの記事「アップルやグーグル、フェイスブックはどの大学の卒業生を採用しているのか」で紹介
-
2020年全豪オープンテニス|ジョコビッチが逆転の粘り勝ちで連続優勝
実にシビレル試合だった。今年の全豪オープンテニス決勝戦である。ジョコビッチの相手は、若手実力派のドミ
-
グランドスラム初優勝を目指す錦織と大坂|データで観戦する全米オープンテニス
現在熱戦が繰り広げられている今年の全米オープンテニス、錦織圭と大坂なおみのそれぞれベスト8進出をかけ
-
日本囲碁マネーリーグ|賞金ランク首位・国民栄誉賞の井山裕太
さてさて、1-2月にかけては毎年、それまでの一年間の各種ランキングが発表されることが多い。僕自身が毎
-
欧州サッカー・マネーリーグ最新版|バルサが初の首位・レアルは2位に後退
今年も発表された、「デロイトフットボールマネーリーグ」。これは毎年、世界的な監査法人デロイトが発表す