日本囲碁マネーリーグ|賞金ランク首位・国民栄誉賞の井山裕太
さてさて、1-2月にかけては毎年、それまでの一年間の各種ランキングが発表されることが多い。僕自身が毎回注目しているのが、先日紹介した「欧州サッカー・マネーリーグ」であり、「日本将棋マネーリーグ」であるのだ。であれば、やはりここは囲碁の世界も見ておかねばならないだろう。それが本日紹介する、2020年の囲碁棋士による賞金ランキングだ。
(1)井山裕太棋聖(31)/1億2851万9441円
(2)一力遼天元(23)/4860万9332円
(3)芝野虎丸王座(21)/4741万2860円
(4)藤沢里菜女流本因坊(22)/2741万0030円
(5)河野臨九段(40)/2692万7300円
(6)山下敬吾九段(42)/2099万3400円
(7)許家元八段(23)/2096万2681円
(8)上野愛咲美扇興杯(19)/1754万5862円
(9)張栩九段(41)/1196万9400円
(10)羽根直樹九段(44)/1172万2000円
今年も井山三冠がダントツでトップの座を守った。棋聖(タイトル料4500万円/以下同)、名人(3000万円)、本因坊(2800万円)は2日制の七番勝負で、囲碁界の三大タイトルだ。井山三冠は、囲碁界のタイトル料が高い順に3つ持ち、それだけで1億円を越えた。 ほかにも阿含・桐山杯(1000万)、NHK杯(500万円)も優勝し、それ以外の対局料も加え、1億2851万9441円となった。 1億円プレイヤーは過去に遡っても小林光一名誉棋聖(3回)、趙治勲名誉名人(4回)、張栩九段(4回)の3人しかいない。4人目の井山三冠は、9年連続1億円越えと驚異的な成績をあげている。
というように、今年もまた囲碁棋士の第一人者・井山裕太が連続して賞金ランク首位を獲得し、圧倒的な強さを見せつけた。ちなみに僕自身は、将棋が好きなのと同時に、囲碁にも大いに興味を持っている。以前にも次のようなエントリで書いたように、とくに若き天才・井山裕太からは、やはり目が離せないのだ。
だからこそ、その井山自身による著書『勝ちきる頭脳』だけでなく、その頭脳と個性をどう伸ばしていったのかを師匠が語る『わが天才棋士・井山裕太』もとても面白く読んだのである。
さて、そんな囲碁の賞金ランキングを将棋と比べてみると、どんなことが見えてくるだろうか? まずその金額だが、それほど大きく変わらない、というのが第一印象ではないだろうか。将棋の世界においても賞金トップの豊島竜王のみが1億円越えを達成しており、その点で囲碁界の井山と同じ状況だ。加えて、ランク10位の棋士で1,000万ー2,000万円程度、というのも囲碁と将棋の共通点と言えるだろう。
一方で、大きく異なる印象を受けたのが年齢である。将棋の賞金ランクにおいては羽生九段を始めとする50代棋士が複数名トップテンに名を連ねているのに対し、囲碁界の最高齢トップテン棋士は44歳だ。若手に注目しても、将棋界では藤井二冠が飛びぬけた成績で弱冠10代ながら唯一のランクインで、20代前半棋士はいない。一方の囲碁では、10代から20代前半の棋士が複数名を連ねており、それだけ若い棋士が活躍している様子が伺える。
というように、囲碁と将棋とで、似ている部分と、ずいぶんと異なる部分、そんな比較結果が見えてくるのも、こうしたランキングの興味深いところである。今年2021年の戦いはもちろん既に始まっている。年末に向け今後どんな熱戦が繰り広げられ、そしてその結果としてどんな賞金ランクが新たにつくられるのか、今から楽しみしかない。
Amazon Campaign

関連記事
-
-
「お茶」が教えてくれる日々のしあわせ
10/13(土) から上映が始まった『日日是好日』。樹木希林の遺作となったこの映画、もちろん僕も見に
-
-
強く美しく華やかに|藤井聡太・新王位が生まれた盤上の宇宙
将棋タイトル王位戦、藤井聡太棋聖が木村一基王位に開幕から3連勝で迎えた第4局、しびれたねぇ。テレビや
-
-
華麗な王者モハメド・アリと、そのアリになれなかった男|沢木耕太郎の名著『敗れざる者たち』と『一瞬の夏』を再読する
2016年6月4日、プロボクシングの元世界ヘビー級チャンピオン、モハメド・アリが74歳の人生に幕を閉
-
-
2015年ことしの漢字は「安」|それでは英語や中国語やドイツ語の一文字は何でしょう?
毎年12月に京都・清水寺で発表される「今年の漢字」に、2015年は「安」が選ばれた(2位は「爆」)。
-
-
難敵アンディ・マレーをフルセットで倒した錦織が準決勝進出|データで見る全米オープンテニス
思わず早朝からWOWOWで生中継を見てしまった本日の全米オープンテニス。ついに錦織がやってくれて大興
-
-
シンガポール建国50周年|エリート開発主義国家の光と影の200年
先日で建国50周年を迎えたシンガポール。Economist や、Wall Street Journa
-
-
ゲーム理論とサッカーW杯そしてPK戦:なぜネイマールは右へ蹴ったのか?
ブラジルで開催中のサッカーW杯もいよいよベスト8。ますます眠れない夜が続く。さて、今回のワールドカッ
-
-
夏休みに素敵な1冊を探そう|知的好奇心旺盛な10代のための読書地図
いまどき新聞なんてほとんど読まない、そんな人が増えてきた現代である。しかしながら、書評欄を楽しみに週
-
-
大ヒット『英国一家、日本を食べる』がなんとNHKでアニメ化|初回放送が予想以上におもしろかった
ちょっと前に『英国一家、日本を食べる』という本が、その続編「ますます食べる」も含めて大きな話題となっ
-
-
藤井聡太七段が先勝|現役最強棋士・渡辺棋聖とのタイトル戦
さあ、いよいよ「将棋史に残る決戦」が始まりましたね。そう、弱冠17歳の若き天才棋士・藤井聡太七段。す