将棋棋士初の栄冠|『Number MVP賞』は 藤井聡太二冠に決定
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先日は以下のエントリでも書いたように、2020年は間違いなく藤井聡太の一年でもあり、将棋棋士がアスリートとして認識された年としても記憶されるだろう。藤井聡太を表紙に据えたスポーツ総合誌Numberは、増刷を繰り返すほど売れに売れた。出版不況や活字離れが声高に叫ばれるものの、よい内容の書籍や雑誌はしっかりと読まれることを印象付けた一件でもあったのだ。
さて、その藤井聡太二冠が、2020年の『Number MVP賞』に輝いたという素晴らしいニュース。もちろん、プロ棋士の受賞は初めての快挙だ。
1年間で最も観る者を興奮させ、輝いたアスリートに贈る「Number MVP賞」。
39回目となる2020年のMVP賞は、史上最年少で2つのタイトルを獲得した藤井聡太二冠に決定いたしました。棋士の受賞は初めてのこととなります。
藤井二冠は初めて挑戦者となった棋聖戦・王位戦でも臆せず勝利を重ね、見事に両タイトルを奪取。その恐るべき強さは、将棋という競技の枠を超えた大きな社会現象となりました。まさにMVPに相応しい活躍でした。藤井二冠の戦う姿に触発され、Numberは9月に創刊40年目で初の将棋特集「藤井聡太と将棋の天才」を刊行。大きな反響をいただきました。
藤井二冠は今回の受賞にあたり、次のコメントを寄せてくれました。
「この度のMVP賞の受賞をとても嬉しく思います。新しい角度から棋士の魅力にせまる特集を御誌が取り上げてくださり、それをとても沢山の方々が手にとって見てくださったことに心より感謝しております。今後とも将棋界を応援していただけますようよろしくお願い申し上げます」今回の授賞については、2021年1月7日発売のNumber将棋特集第2弾「藤井聡太と将棋の冒険」でもお伝えします。
スポーツ・グラフィック・ナンバー
編集長 宇賀康之
この受賞のスゴさは、過去38回の受賞歴を見てみれば一目瞭然だろう。中田英寿にイチローそして羽生結弦に大坂なおみと、日本スポーツ界に燦然と輝く先人たち、新しい記録と記憶を生み出してきた偉人たち、そんな先達に栄光に連なる、藤井二冠の今回の受賞だ。将棋界にとっても極めて明るいニュースと言えるだろう。
だからこそ、ここでNumberによる、柳の下のドジョウを狙った最新号はまた将棋特集なのである(笑)。しかし、これがまたなんだか嬉しいのか悔しいのか分からないが、面白かったのである。いやぁ、読ませるねえ。将棋ファンだけでなく、一般読者向けの雑誌だからこそ、藤井二冠を始めとするプロ棋士たちの生き様や考え方をとても魅力的に描写している。ぜひこれは、今まで将棋にあまり興味がなかった人のこそ、そして藤井二冠をきっかけにちょっぴり将棋に関心を持った人に読んでもらいたい内容だ。ラグビーワールドカップのときも「ニワカ」が注目されたではないか。ニワカのファンがいるからこそ、各種競技やスポーツの裾野が広がり、ビジネスが成り立ち、そして将来につながる育成にも貢献するのだ。だから、今回のNumberのように、ライトなファンを増やすような試みはもっともっと増えていくべきだろう。いずれにしろ、とても面白い内容だったので、ぜひ読んでみて下さい。
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